美姫レストロオセ

伝承に拠れば。
19の獣の中にあって異端、獣ならざる美貌を持つ少女の姿をしたソレは、類希なる魔術の才を有していたという。その業は既に人の身で為しえる限界を突破し、超越し、やがて死の枷を外しうるほどにまで高められたという。
撃鉄の、ザリスの動体視力ではとても追い切れぬ猛攻撃によって完膚なきまでに粉々に砕かれた敵対者はそのまま地に臥したはずだった。
しかし。
不死に到る完全再生能力。楽園の主・レストロオセの役割を担うは獣の剣、ねこ☆ぱんち♪そぉど。
致命傷を受けても瞬時に元通りになってしまう、恐るべき能力の持ち主である。

恐るべき難敵を前にして、撃鉄は再び羽を逆立てて天に向け、熱波をあたりに振りまきながら臨戦態勢を執る。その瞳に恐れや躊躇の色は無い。神速の火力を持つ撃鉄にとっては、これほどの脅威でさえもおそるるに足らぬということか。ザリスはその事実に驚愕し、そして次なる展開がどうなるのかと固唾を呑んで状況を見守る。

その時。ふと、撃鉄が視線を逸らした。

「決着の前にちょっと水飲んできます」

ザリスは盛大にずっこけた。
ひとり取り残されたザリスが顔を上げると、目の前には不気味な笑みを浮かべるねこ☆ぱんち♪そぉど。
あたりを、一瞬の静寂が包囲した。
刹那の後。
絶叫と怒号がはじけ飛ぶ。