妨げるもの語りて曰く、

「王、超越獣カッサリオは天地を掌握する万能の一角を持ち、隕石獣マークシフは世界を統べる摂理を識る全知者、そして無為なるダーナは伝承の中では全くの意味を持たない」
このように、と無数の手が広げられ、大仰な手振りが花を開くように視点を一箇所に集中させる。中心に在るのは、ひとつの目である。

「獣たちには伝承の上での明確な役割、物語上の機能とでもいうべきものがある。 既に死んだものとて、それは例外ではない。 リクートマータァ、霧獣リモラの役割(ロール)を持つ者よ」
まくろが相対するその異形は、如何なる原理でか浮遊し続ける口の部位を震わせて言い放つ。

無数の腕が撓み、歪む。まくろが瞬きをする間に、無数の腕が億万の瞳に変化していた。
剣山のような視線がまくろを突き刺す。

「私の介入に、手を貸してもらおうか。 まくろ=こすもす=りーん」

断る手立てなど、まくろにはありはしない。




少なくとも、今は。